沼津の地酒 白隠正宗をアジの開きで飲む
 干ものは日本酒の佳肴になるだろうか? これがなかなか難しいのだ。特に困ってしまうのがアジの開き。ウルメイワシの目刺しがあんなに酒に合い、杯を重ねてしまうのに、ご飯にあれほど合うのにアジの開きでは酒がすすまない。
 いちばんの原因は「うますぎる」というのがある。塩辛くて、旨味が強いために、故・吉田健一がいったごとく「うまいものはご飯と食べたい」というのが“正に”なのである。それ加え、ゆったりと日本酒などを飲んでいると、マアジの風味が酒の味わいに障害となる。
 そこでちょっと工夫して、アジの開きを最上の肴にしてみた。といっても特に手を加えたわけではない。開きを焼き、一口サイズに切る。そして薬味に有馬山椒の小缶を取り寄せたのだ。
 山椒の風味がマアジの風味を和らげて、旨味だけが酒とともに喉の奥をすーっと消えていく。この酒が今回は沼津市原の白隠正宗。辛口の切れのいい味わいに、上質のアジの開きが素晴らしく合って、駿河路の口福、ここにあり!
カネマル笹市が提案する干ものの食べ方
カネマル笹市 干もの話目次へ